タクシー会社入社後に受けるさまざまな研修

タクシー会社に入社すると、その翌日から、タクシードライバーとして必要な資格の取得、知識・接客方法の習得、機器の操作方法等の習得のために研修が始まります。

研修の期間や内容に関しては、大手だから期間が長くて充実しているかというとそうでもなくて、新人ドライバーの感覚としては、すぐに営業所に配属をしているような会社や、配属後には同乗研修を行わない会社もあります。

タクシードライバーという仕事は、机の前で話を聞いていても何の役にも立たないのは事実なので、会社としては1日でも早く現場に出したいというのはとても良くわかります。

しかし、個人的には、教習車による同乗研修を充実させて、ホテルや病院、オフィスビル、駅などの場所を出来るだけ多く教えて、実際に入る経験する必要があると思っています。

現在行われている研修期間はおよそ20日間から30日間ほどで、研修期間や研修内容は入社する会社により異なります。

このページでは、タクシー会社に入社してから、営業所やタクシー部門に配属されるまでに行われる研修の目的・内容などについてご紹介します。

スポンサーリンク

おおまかな研修の流れ

一般的に行われる研修の流れは次のとおりです。

普通自動車二種免許の取得

地理試験対策の研修

「公益財団法人 東京タクシーセンター」の「新規講習」の受講、「地理試験」の受験

「独立行政法人 自動車事故対策機構」の適性診断

タクシーの営業方法・接客方法・法令・事故防止・機器操作・無線営業方法等の研修

教習車による実地研修(同乗研修)

営業所・タクシー部門での配属後研修(同乗研修)

研修が行われる時間帯

私の会社の研修は、

朝の6時40分に集合、6時50分に朝礼開始

でした。

実際には普通自動車二種免許を取得した翌日からだったのですが、最初は冗談を言っているのかと思って「本当は何時から始まるのですか?」と聞いたら怒られてしまいました。

タクシー業界は24時間営業です。始業・終業と言う概念はありません。本社は9時から17時の世界ですが、営業現場では内勤職員も朝の6時過ぎには全員出勤していて、最初の点呼は6時半に始まります。

研修も営業現場の時間で行われていただけで、今では朝の6時40分集合も全く普通の時間なのですが、9時から17時の世界に慣れていた私にとっては、衝撃的な出来事でした。

毎日、朝5時すぎの始発電車で通っていたのですが、研修中は完全に「なんでこんなに早い時間に出社するのだろうか?いじめか?」という疑念(笑)に取り付かれていたのは事実です。

ちなみに研修が終わる時間は16時30分。明るい時間に帰れたので、今思うといい待遇でした。

研修期間中の給料

ほとんどのタクシー会社では、二種免許取得期間や地理試験の勉強期間を含めて、研修期間中は1万円前後の日当が支払われるようです。(金額・期間は会社によって異なります。)

また、交通費も全額か、または上限を決めて支給される会社が多いようです。

「最初の給料は3ヶ月間30万円保障」というような会社が多いですが、この金額は乗務が始まってから算出する場合や、乗務開始後最初の給料から適用される会社が多いようです。

普通自動車二種免許の取得

タクシードライバーとして最初の仕事は、普通自動車二種免許を取得することです。

仕事として免許を取得するのですから、1回の試験で合格したいものです。また自動車教習所では「安全に運転する方法」を教えてくれるので、この期間にしっかいりマスターすることが大切です。

会社によっては、自動車教習所に通うときから「制服着用」を義務付けるようです。

普通自動車免許の取得の詳細ついては、次の記事をご覧下さい。

タクシー会社によって異なる!「普通自動車二種免許」合格までのプロセス

地理試験対策の研修、地理試験の受験

研修の順番は会社によって異なりますが、普通自動車二種免許取得後に東京タクシーセンターが実施する「地理試験」に合格しなければなりません。

地理試験は難易度が高く、地理試験対策の勉強をしないと合格が難しい試験です。会社によっては専門の研修スタッフを配置するなどして、合格までサポートしています。

地理試験の内容、合格に向けての勉強方法などについては、次の記事で詳しく説明しています。

意外に難関?タクシーの地理試験に合格する方法

「公益財団法人 東京タクシーセンター」の新規講習

「公益財団法人 東京タクシーセンター」とは、昭和44年に「東京タクシー近代化センター」として設立された公益法人で、昭和45年に施行された「タクシー業務適正化特別措置法」に定められた適正化事業を行っています。

東京都特別区・武三交通圏でタクシードライバーとして仕事をするためには、東京タクシーセンターが実施する「新規講習」を受講して、地理試験に合格後「乗務員証」の交付を受けなければなりません。

東京タクシーセンターの場所は、江東区南砂にあります。東京メトロ東西線の南砂町駅から歩いてすぐの場所です。

集合住宅と公園に囲まれていているエリアで、あまり生活感が無い場所です。

昔の名称が「東京タクシー近代化センター」だったからでしょうか、私にとってはなぜかとても暗い場所というイメージがあったのですが、建物は昭和61年に建てられた5階建てのビルで、1階には昼食時間に食事ができる食堂もあります。

ビルの2階と3階に各種講習が行われる教室があり、2回にはドライブシミュレーターが沢山並んでいる部屋もあります。

「新規講習」は、週2回4日間のスケジュールで実施されていて、講習の時間は9時から17時までです。各タクシー会社の新人タクシードライバーが対象なので、都内のタクシー会社から沢山の人が参加しています。

講習内容は、「法令」「安全」「接遇」「地理」の4部門に分かれていて、それぞれ専用のテキストに従って講義が行われます。1日の終わりには確認のためのテストがあります。

この研修期間中のメインイベントは、何と言っても3日目の午前中に行われる「地理試験」でしょう。この研修期間にも「地理」の講習はあるのですが、地理試験の問題とは関係ないと思っていたほうが無難です。試験対策の講義ではないということです。

「接遇」の講義で、東京タクシーセンターに寄せられる苦情の話しがあったのですが、その内容が一番印象に残っています。

配属前の研修

二種免許取得や地理試験合格が終わると、タクシードライバーとしての実務に関する研修があります。大きく分けると、机上で行われる研修と、教習車に乗って行われる研修の二つに分けられます。

そのそれぞれについて、お話しをします。

机上で行われる研修

①法令に関する研修

主に「タクシー業務適正化特別措置法」で定められた「銀座地区」の規制について講習が行われます。その他にも「道路交通法」に関する一般的な講習も行われます。

②顧客対応に関する研修
お客様の乗車から降車まで、様々な場面についての話しがあります。標準的な話法を使ったロールプレイングも行われます。会社によってはマナー研修も行われます。

③無線営業や各種機器取扱方法の研修
無線営業のしくみ・その対応方法、料金メーターの操作方法、クレジットカード・スイカ・パスモ・タクシーチケットの取扱方法等を、実際の機器を使って、間違いなく出来るまで繰り返し練習します。

④給与規定、勤務時間、懲罰などについての研修
給与・賞与の算出方法、21時間勤務の厳守、事故・違反を起こした時の懲罰等についての研修です。

⑤事故防止に関する研修
一般的な事故の類型や、その原因、防止方法についての話のほか、事故時のドライブレコーダーを使った研修や、会社によっては警察官(元警察官)の事故に関する研修もあります。

⑥営業方法に関する研修
私の会社では、当面、港区、千代田区、中央区を中心とした流し営業を行い、都内の地理を習得することに全力を挙げるように言われました。また、ベテランの乗務員の方の講義もありました。

教習車を使って行われる研修

新人タクシードライバー4人と教官が教習車に同乗して、新人が交代で運転をしながら都内を走ります。運転の他に、実際の乗務を想定したいろいろな研修が行われます。この段階ではまだお客様は乗車されません。

①地理研修
私の会社では、都内を5ブロックに分けて、1日1ブロックずつ5日間かけて、そのブロックにある施設・専用乗り場等を回りました。また、実際に銀座に行き、乗車禁止地域や右折禁止交差点等を確認しました。

②顧客対応研修
お客様が乗車されてから降車されるまでを通して練習します。料金清算時には、実際に機器を使って、全ての支払い方法に対応が出来るまで練習します。

③無線営業の研修
実際にダミーの無線を受信して、お客様乗車・降車までの練習をします。

④日常点検・タクシー洗車の研修
教習車に乗車する前には日常点検を、終了時には洗車を行います。

⑤非常時の研修
不審者の対応方法、非常無線の使用方法の研修、パンク時を想定したのタイヤ交換の研修を行います。

配属後の研修

研修センターでの研修が無事に終了すると、いよいよ営業所への配属です。研修期間を一緒に過ごした新人ドライバー達とも、お互いの健闘を祈りながらお別れとなります。

私の会社では、営業所に配属される日に最初の乗務が組まれています。最初の乗務と2回目の乗務では、グループ(会社によっては班、チームなど)のリーダーの方が助手席に乗って、いろいろとアドバイスをしてくれます。

最初の乗務で助手席にベテランの方が乗ってくれるのは、会社によって1回~3回のようです。またある大手の会社では、最初から1人で乗務するそうです。

また、私の会社では、月に1回のペースで、先輩方が新人向けの勉強会を開催してくれたので、わからないこと等はその時にも聞くことができました。

さて、最初の乗務ですが、とにかく初めてお客様をお乗せするわけですから、もう緊張でどこで誰をお乗せしたのか、何がどうだったかあまり覚えていません。

その代わりに、助手席に座って頂いたリーダーの方のアドバイスは良く覚えているのです。車の運転の事から、どこを流したらいいのか、どのルートでその行き先に行くのか、道がわからないときはお客様に何と言えばいいのか、近道はどれか、抜け道はあるのか、どこで休憩するのか等、いろいろとアドバイスを頂き、なんとか2回の乗務を終えました。

3回目からは1人で乗務したのですが、その後もリーダーの方だけでなく、先輩・同時期に入社した同僚、そしてたくさんのお客様に助けられながら、なんとか今まで仕事を続けています。

スポンサーリンク

この記事が気に入ったらシェアして頂けると嬉しいです!

フォローする