転職するタクシー会社の選び方

「タクシー会社なんてどこも一緒だよ」という人がいます。

確かに、東京のタクシーは都内23区と武蔵野市・三鷹市ならばどこでも営業が出来るので、どの会社に転職してどんな車に乗っても、ガンガン稼ぐタクシードライバーはいるのでしょう。

特に「流し営業」専門で仕事をやっている運転手は、あまりタクシー会社の違いを感じることは少ないかもしれません。

しかし、

タクシー会社はどこでも同じではありません。

どのタクシー会社に転職するかによって、入社後の営業スタイルや売上げ金額、給料まで変わってくるのです。

実際に、「流し営業」においても、お客様が特定の会社タクシーを選んで乗車されることがあります。また、「付け待ち営業」をする場合には、特定の場所で「付け待ちを出来る会社」と「付け待ちを出来ない会社」が存在します。

東京23区・武三交通圏には347社ものタクシー会社があります。どの会社に転職をしてタクシードライバーの仕事を始めたら良いのか迷う方も多いでしょう。

そこで、転職するタクシー会社を選ぶ時の着眼点について、いくつかご紹介します。

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都心エリアに強い「東京4社」のタクシー会社に転職する

東京4社タクシー

「東京4社」とは何か?

東京で稼いでいるタクシードライバーは、東京23区の中でも、港区、千代田区、中央区という都心エリアで仕事をします。この都心エリアで有利に仕事ができるのが「東京4社」のタクシー会社です。

「東京4社」とは、東京の大手タクシー会社である「日本交通」「国際自動車」「大和自動車」「帝都自動車」の4社のことです。

「東京4社」と呼ばれる理由は、この4社が営業上の相互利益を得るために「東京4社営業委員会」という組織を作っているからです。この組織では「東京4社」だけで使える「共通タクシーチケット」と「東京4社」だけで使える「共通プリペイドカード」(タプリカード)の発行・取り扱いを行っています。

また「東京4社」タクシー車両の塗装についても、「4社カラー」と呼ばれるレモンイエローに赤帯のデザインに統一されています。

この「東京4社」のタクシー会社に転職をする「メリット」と「デメリット」についてご紹介しいます。

【メリット①】 タクシーチケットを利用されるお客様が多い

東京4社タクシーチケット

タクシードライバーにとって、タクシーに乗ってもご自分の懐が痛まないお客様ほど、いいお客様はいません。

そんなお客様はいるのかと思われるかもしれませんが、いらっしゃるのです。

それは、

タクシーチケットを使われるお客様です。

タクシーチケットとは料金を一括して後払いするシステムです。多くの場合、そのチケットを採用している企業様がタクシー料金を支払います。つまり「会社持ち」でタクシーに乗れるということです。

本来、タクシーチケットの契約は、個々のタクシー会社やタクシーの共同組合と企業との間で締結されます。ところが、東京4社で使えて利便性が高い「東京4社共通タクシーチケット」を採用している企業が相当数存在します。

これらの企業の役員・従業員が通勤や業務上タクシーを利用する時には、「東京4社共通タクシーチケット」を利用する可能性が高くなるのです。

また、「東京4社共通タクシーチケット」を採用している企業が取引先の接待を行う時には、お帰りの「車代」として「東京4社タクシーチケット」をお渡ししてお見送りをする可能性も高くなります。

企業の接待が行われる繁華街の代表格は中央区の銀座ですが、夜の銀座ではこの「東京4社共通タクシーチケット」を使って東京郊外や神奈川・千葉・埼玉の住宅地までタクシーで帰宅するお客様が数多くいらっしゃいます。

この4社チケット以外に、大企業や外資系企業が「独自のタクシーチケット」を採用していることも多いのですが、このタクシーチケットが利用できるタクシー会社の一覧表には、ほぼ100%「東京4社」が含まれています。

さらに、最近では「JCB」や「VISA」などのクレジット会社が発行する「タクシーチケット」や、タクシー専門の「キャブカード」を採用している企業も増えているのですが、「東京4社」のほとんどのタクシーで利用可能なので、これらの支払い手段を利用されるお客様も「東京4社」のタクシーを選んでご利用されます。

「東京4社」に転職すれば、これらのチケットのお客様をお乗せする可能性が高くなります。

【メリット②】 数多くの専用乗り場を持っている

「東京4社」のタクシー会社は、港区、千代田区、中央区などにあるオオフィスビルや企業・ホテル・病院などに数多くの「専用乗り場」を持っています。

「専用乗り場」とは、オフィスビルやホテル・病院などに設置してある「タクシー乗り場」の中で、特定のタクシー会社しか乗り入れることができない「タクシー乗り場」のことを言います。

この「専用乗り場」の数は「日本交通」が圧倒的に多くて都内に26ヶ所、次いで「国際自動車」が都内に20ヶ所持っています。この2社に比べると「大和自動車」は三井物産など、「帝都自動車」は汐留シティセンターなどに専用乗り場がありますが、残念ながら前の2社からは大きく見劣りがします。

ただし「専用乗り場」を持っているタクシー会社のドライバー全員が「専用乗り場」への乗り入れできるわけではなく、運転手としてのキャリア、車のグレードなどの条件が必要な「専用乗り場」もあります。

タクシードライバーの仕事は「専用乗り場」だけで稼げるほど甘い世界では無いのですが、オフィスビルの「専用乗り場」は安定してお客様をお乗せできてビジネスマンのお客様が多い魅力的な営業スポットです。

オフィスビル以外でも、ホテル・病院のタクシー乗り場は、曜日や時間帯によっては遠距離のお客様が数多く見込める、営業上重要なタクシー乗り場です。

これからタクシードライバーに転職を考えている方で、都心エリアでの営業に関心がある方にとっては、「チケット」や「専用乗り場」をで営業機会が見込める「東京4社」は、転職先の第1候補になると思います。

【デメリット】 給料の歩合の率が低い

タクシードライバーの給料は、「固定給+歩合給」または「完全歩合給」の会社がほとんどです。

タクシードライバーの給料の仕組みについては別の記事で詳しくお話ししますが、「固定給+歩合給」でも「完全歩合給」の場合でも、「東京4社」タクシー会社の月間の給料は(後払いのボーナス分を含んで)、4社とも給与体系が違うので厳密にはずれがあろますが、月間の売上げ金額(消費税分は除く)の約58%から60%に収まるようです。

東京4社以外の一部のタクシー会社では、月間の売上げ金額の60%から63%の給料を支給しており、それらの会社と比べると低い金額になりますが、この事には理由があります。

タクシーのお客様がクレジットカードや電子マネー、タクシーチケットなどでお支払いになると、タクシー会社はその金額の約3%から5%を手数料としてクレジットカード会社に支払います。

歩合率の高い会社では、この手数料をタクシードライバーの給料から控除して、そのお客様を取り扱った運転手負担にしている会社があります。また給料から無線機やカーナビの使用料を徴収している会社もあるようです。

私が知る限りでは、「東京4社」のタクシー会社本体ではこの手数料を会社が支払っており、クレジットカード決済等の手数料や機器の手数料を徴収している会社は無いので、この違いが歩合率の差になっているようです。(「東京4社」のグループ会社では徴収している会社もあるようです。)

どちらの給与体系が良いのかは一概に言えませんが、もしもクレジットカードやチケットなどのお客様がいなかった場合には、「東京4社」のタクシー会社の給料が少ないことになります。

東京タクシーセンターから「優良評価」を受けている事業者に転職する

東京タクシーセンター優良マーク

一般にはあまり知られていないのですが、東京には13箇所の「優良タクシー乗り場」があります。

具体的には、東京駅丸の内北口・南口、上野駅正面口、池袋駅西口、渋谷駅西口、新宿駅西口地下、新橋駅東口、品川駅高輪口、羽田空港国際線などで、指定されているどのタクシー乗り場も、数多くのお客様が見込めるタクシードライバーにとって重要なタクシー乗り場です。

優良タクシーのりばはこちら

これらの「優良タクシー乗り場」には「公益財団法人 東京タクシーセンター」から「優良評価」を受けているタクシー事業者のタクシーしか乗り入れできません。つまり「優良評価」を受けていないと、その会社に転職しても重要なタクシー乗り場で営業をする事ができないのです。

東京の法人タクシー会社は、毎年「公益財団法人 東京タクシーセンター」から「優良評価」(以前の「AA」「A」評価)、「B評価」、「C評価」の指定を受けています。

平成26年には、平成25年4月1日から平成26年3月31日までの実績に基づいて、東京都のタクシー事業者336社中267社が「優良評価」を受けており、「公益財団法人 東京タクシーセンター」のホームページで公表されています。

東京タクシーセンターの評価はこちら

評価は、「接客・サービス」・「安全・運行管理」・「経営姿勢」に関する情報について合計評価点数が100点満点となるように 評価基準を設定し、数値化による評価方式により評価が行われています。

具体的には「接客・サービス」では、タクシー業務適正化特別措置法による銀座地区での違法営業の有無(平日午後10時から翌午前1時まで、タクシー乗り場以外でタクシーのご利用が出来ない件)、東京タクシーセンターへの苦情の有無、サービスモニター(覆面調査)よる評価、「安全・運行評価」では、速度超過違反実績・駐停車違反実績・事故防止や過労防止への取り組み等が評価されています。

「優良評価」の有無は、転職に際して、その会社のタクシードライバーの資質や、会社の運転手教育の取り組み・経営姿勢を判断する目安にもなります。

タクシードライバーに転職するのであれば、タクシードライバーの資質や安全意識が高く、重要なタクシー乗り場で営業が出来る「優良評価」を受けているタクシー事業者の中から会社を選ぶと良いでしょう。

タクシー会社の所在地で転職先を選ぶ

タクシードライバーの仕事は、早朝に出社して翌日早朝に帰宅するという勤務パターンが多いので、交通機関を使わないで通勤ができる自宅から近いタクシー会社を選ぶというのも、ひとつの選択方法かと思います。

ただし営業面では、営業所の所在地によって若干の有利・不利があるので、所在地によるメリット・デメリットをご紹介します。

【都心エリアに近い会社・営業所のメリット】

都心に近い会社や営業所から営業に向かうのであれば、車庫を出てすぐにお客様を乗せることができて、帰庫にも時間がかからないため、営業時間や距離を有効に使うことが出来ます。

一方、都心エリアまで遠い場合には、会社や営業所から都心エリアまでの往復に時間がかかります。また車両が故障して修理が必要な場合や、会社や営業所に急遽戻らなくてはいけない場合に時間がかかります。

実はタクシーが1出番に営業ができる時間は21時間(3時間の休憩を含む)までと定められていて、1出番の走行距離も365kmまでと定められています。

鉄道会社やバス会社と同じように、タクシー会社も重大・悪質事故ががあった場合や、交通違反が一定以上累積したような場合には、行政がタクシー会社の監査に入りますが、その際には労働時間や運行距離の管理等も厳しくチェックされ、不備があると行政処分の対象となります。

以前は労働時間の管理はそれほど厳しく行われていなかったのですが、2009年に国際自動車がこれらの不備等で認可取り消し処分を受けたことを契機に、タクシー会社はドライバーが21時間を超過して営業所に戻って来た時には厳しく指導を行うようになりました。

指導と言うのは、違反や事故を起こした時と同じように事情書や報告書・反省文などを何枚も書かされて、会社の幹部職員から延々とお説教を受ける事です。

都心に近い会社・営業所であれば、そのようなプレッシャーも軽減され、余裕を持って営業ができるかもしれません。

【都心エリアに近い会社・営業所のデメリット】

東京の郊外や埼玉・千葉などに自宅がある方の場合、転職先への通勤に時間がかかることになります。

タクシー会社は、早朝に出社して翌日早朝に帰宅するという勤務パターンが多いので、電車やバス等の時間によっては、他の勤務シフトの検討も必要になるでしょう。

もしも、転職後に都心ではなくて地元密着の営業をしたい、自宅の近くの駅や繁華街で営業をしたいというのであれば、もちろん都心エリアに拘る必要はなく、通勤に便利で地元で評判の良い会社を選ぶと良いでしょう。

まとめ

タクシー会社はどこも同じように見えますが、実は同じではありません。

「東京4社」「優良会社」「所在地」などの違いにより、入社後の営業スタイルや収入なども変わってきます。

応募するタクシー会社を選ぶ際には、これらの予備知識を得たうえで、求人情報をチェックするのが良いでしょう。

皆さんの成功をお祈りしています。

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