「タクシーは交通違反で捕まらないんだよね?」
と時々聞かれるのですが、そんな事はありません。
よく捕まります。
私の会社では、毎日のように誰かが警察の取り締まりを受けていて、その結果、毎月「免停」で仕事が出来ない人が出てしまいます。
でも、交通違反を起こしてもそれだけで済めばいいのですが、その先には交通事故の危険が潜んでいます。
そもそも、交通事故が起きやすい危険な場所だから、いろいろと制限がされているのです。安全に運転するためには、やはりそれらの規制や制限は守らなければいけません。
では、どうしてそんなにタクシーは警察の取り締まりを受けてしまうのでしょうか?
ここにも、タクシーという仕事が関係しているかもしれませんね。
このページでは、タクシーが起こしやすい交通違反について紹介します。
目次
新人ドライバーが起こしやすい交通違反
深夜の繁華街で付け待ちの「駐停車違反」
新人のタクシードライバーは、配属前の研修で「交差点での付け待ちは駐停車違反で取り締まりを受けるので、絶対にやってはいけない」と厳しく教育されます。
ところが、営業所に配属されて、深夜に繁華街を流してみると、交差点の中や横断歩道の上で沢山のタクシーが付け待ちをしている光景を目にして
「なんだ、やってんじゃん」
と、タクシー営業の現実に驚きます。
その後、何度も繁華街を流していると、お酒を飲んでいるお客様は、流しているタクシーには見向きもせずに、交差点で付け待ちをしているタクシーにどんどん乗っていくのに気がつきます。
「オレも、やろっ!」
確かに、酔っているお客様は、交差点で違法駐車をしているタクシーに乗るのですが、ふと気が付くとお巡りさんが窓ガラスを「コンコン」とノックをしていて、駐停車違反の取り締まりを受けることになります。
路上や横断歩道上での付け待ちは駐停車違反です。交通の妨げになり、多くの人に迷惑をかけています。捨て身で営業をする必要はありません。絶対に止めましょう。
青山公園前での「放置駐車違反」
青山霊園と青山公園に挟まれた道路は、東京都内で唯一「タクシーだけが駐車違反にならない場所」です。タクシー以外の車を停めると駐車違反です。
ただし、この道路ならばタクシーをどこに停めでもいいわけではありません。標識で範囲が指定されています。
毎年この範囲の外側にタクシーを停めてトイレや買い物に行って、駐車違反の取り締まりを受ける新人ドライバーが出ています。
この場所に限らず、コンビニや公衆トイレ前でのタクシーの違法駐車は、一般の方に多大な迷惑をかけています。駐車監視員の人も重点的に取締りを行っています。
絶対に止めましょう。
首都高での「速度超過違反」
首都高の制限速度は、湾岸線だけが80kmで、それ以外は60kmです。
あまり首都高を走っていなかった新人ドライバーは、この制限速度を知らないこともあります。
ところが、首都高を実際に走ってみると、その制限速度が妥当なことを実感します。
首都高は「高速道路」とは名ばかりで、カーブが多くて見通しが利かず、道幅も狭くて路肩も無く、合流車線は短くて複雑と、車が安全に走行するための配慮がなされていない危険な道路です。
こんな道路を、タクシーだけでなく、大型トレーラーや二輪車も100kmを越える猛スピードで走っているので、毎日のように大事故が起こるのは当然です。
そして、このように危険な道路なので、昼間は白バイ、夜は覆面パトカーが取締りを強化していています。
制限速度は標識にもしっかりと書いてあるのですが、お客様から「出来るだけ急いで下さい」などと言われると、新人ドライバーはどうしてもスピードを出してしまい、取締りを受けてしまいます。
私の会社でも、毎年首都高での交通事故が起きています。原因のほとんどはスピードの出しすぎです。
事故防止のためにも、スピードを抑える勇気を持ちましょう。
タクシードライバーだから起こしてしまう交通違反
タクシードライバーとしての経験が少ないと、何でもお客様の言うことを聞いてしまいがちです。
しかし、交通違反につながることは、絶対に断わるようにしましょう。やんわりと、申し訳なさそうにお断りするのが「コツ」です。
そうしないと、大事なお金をどんどん国庫に納めるだけでなく、免停で仕事ができなくなって、生活が脅かされてしまいます。
もちろん、大事故に繋がる危険もあります。
進路変更禁止違反
黄色い線をまたいで車線変更をする違反の事です。
交差点の手前でお客様をお乗せしたら、その車線が左折レーンで車線変更禁止のような場合があります。
ここでお客さんに「まっすぐ行って」とか「右に曲がって」と言われて車線変更をすると、交差点ににいる警察官に進路変更禁止違反で取締りを受けます。
また、交差点の手前の進路変更区間を走行中に、お客様から急に「右に曲がって」と言われて、取締りを受けるケースもあります。
指定通行区分違反
交差点手前の道路に書いてある矢印と違う方向に進行する違反です。
これも、交差点の手前の左折レーンでお客様をお乗せして、お客様の指示でそのレーンから直進するような場合に取締りを受けます。
Uターン禁止違反(指定横断等禁止違反)
これも、お客様をお乗せしてすぐに、お客様の指示でUターンをして取締りを受けるケースが多いです。
また、目的地が道路の反対側にあり、お客様に「Uターンして停めて」と言われてUターンをして、取締りを受けることもあります。
通行禁止違反
朝や昼、夕方等、一時的にスクールゾーンや歩行者専用になる道路があります。
このように、一時的に自動車が通行できない道路等を通行すると、通行禁止違反で取締りを受けます。
お客様に「大丈夫だから、ここを通って」と言われて、そのまま進行して道路の出口にいる警察官に取り締まりを受けることが多くなります。
タクシーでなくても起こしてしまう交通違反
これらの違反はタクシー以外の車でも起こしやすいのですが、長時間の運転で集中力が切れてくると起こしやすくなります。
重大事故に繋がる危険もあるので、十分に注意をしましょう。
信号無視
信号無視はとても多いです。
よくあるのは、右左折時には左折矢印や右折矢印が出てから進行しなければいけない交差点で、直進矢印しか出ていないのに曲がってしまうケースです。
まわりの車につられて進行してしまうケースと、疲れて判断力が鈍っていて勘違いで進行するケースがあります。
また、黄色から赤に変わる直前に交差点に進行して、信号無視で取り締まりを受けるケースも多くあります。
「黄色」信号は原則として「止まれ」です。安全に停止できない時に限り他の交通に注意して進むことができるとされています。
そのため、微妙なタイミングの時には、かなり高い確率で取締りを受けることになります。
一時停止違反
「止まれ」の標識では、必ず一時停止する癖を付けておかないと、出会い頭の事故の危険性が高まります。
また、最近特に一時停止違反で取締りを受けるケースが目立ちます。
もちろん、必ず一時停止をしていれば、取締りを受けることはありません。
横断歩行者等妨害等違反
聞きなれない違反ですが、横断歩道を歩いている人の直前を通過すると、この違反で取締りを受けます。
道路交通法第38条には次のとおり記載されています。
- (横断歩道等における歩行者等の優先)
第三十八条 車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。
道路交通法に書いてあるとおり、日本では横断歩道を渡ろうとしている歩行者がいる時には、必ず横断歩道の手前で停止しなければなりません。
確かに、二種免許取得の自動車教習所でも厳しく言われて、卒業検定でもその通りにしないと合格できませんでした。
実際には、横断歩道上に人がいても横断歩道を横切る車が多いのですが、タクシー会社ではこの違反で取締りを受けたドライバーが何人もいます。
最近では、赤信号でも平気で横断歩道を渡る歩行者や自転車も多いので、事故を防ぐ意味でも、横断歩道手前での徐行や一時停止にも気を使う必要があります。
交通違反は会社にもペナルティがある
タクシーが悪質な交通違反(「駐停車違反」「放置駐車違反」「速度超過違反」)を起こした場合には、警察からタクシーの監督官庁である国土交通省関東運輸局に通報が行きます。
そして、違反の累積件数が一定以上になると、その違反を起こしたタクシー会社に国土交通省関東運輸局の監査が入ります。
さらに、この監査中に他にも問題が発覚したりすると、タクシー会社に対して厳しい行政処分が課されることになります。
行政処分を受けると、一定の期間は営業できるタクシーの台数を減らされるので、タクシー会社はこの行政処分にまで発展する悪質な交通違反(「駐停車違反」「放置駐車違反」「速度超過違反」)をとても嫌がります。
そのため、会社からこれらの違反を起こしたドライバーに対しても、乗務停止などのペナルティを課すことがあります。
交通違反の反則金を支払うだけでなく、給料まで少なくなるのでは、タクシーの仕事をする意味がありません。
交通違反には十分に注意しましょう。